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略奪貴公子
第9章 招待状

 公爵のメイドがこんな事を口走れば、すぐに城から追い出されかねない。いや、打ち首の可能性もおおいにあるのだ。

「女…お前はモンジェラ公爵に仕える者だろう?」

「勿論です、わたしは優しい旦那様を心から尊敬しております!ですがこんなふうにレベッカ様が嫁いで来られたのは…」

「──…?」

 アドルフは、エマの話に引っかかりを覚えて、眉をひそめる。レベッカのこの婚姻(コンイン)は何か裏があるとでも言うのだろうか?


 だが彼女は続く言葉を喉の内側で堪えた。

 その代わり、涙を流すレベッカの手をとって、両手で握った。

「レベッカ様には本当に恋をした方と一緒になってほしいと……本心では願っています」

 ──それが彼女の本意だからだ。

「……例えば」

「──…?」

「伯爵のような……殿方と」

 そしてエマは、最後に小さくそう呟いた。



「───!」

 伯爵…!?ですって…?

 何故…どうしてエマまで
 そんなことを言うのだろう

「伯爵ってクロード…っ、いえ、…ブルジェ伯爵の、こと?」

 聞き返すレベッカに、コクリと、エマは頷いた。

 伯爵が誰かを知らないアドルフは、黙って耳を傾ける。

「わたしには、ブルジェ伯爵も…レベッカ様に想いを寄せていると感じられるのです」

「そんなわけないでしょう…?」

「いいえ、レベッカ様。庭を見るためなんて嘘で、伯爵はあなたに会うために城に来ているのだと思います。きっと伯爵は…」

「──違います!」

 レベッカは強く否定する。


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