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略奪貴公子
第9章 招待状

 そんなこと、あるはずがない。

「伯爵がわたしに関わるのは…っ──わたしが、ブルジェ伯爵の正体を知ってしまったから……で……!」

 そう…全ては口止めの為なのだ。

「それはどういうことですか?」

 レベッカの発した不可解な言葉。それを聞いた二人は疑問符を浮かべた。


ギリッ..


 レベッカは歯をくいしばる。

 ずっと…誰にも打ち明けられずにいた、クロードの本当の姿──。


「あの人は…ただの貴族ではなくて」


 この二人なら信頼できる。

 この秘密を、打ち明けられる──。




ガサッ


「──っ」

 ところが不意に、レベッカの足元の草むらが音をたてて揺れ動いた。


「なに……!?」


 伯爵の正体を話そうとしたレベッカも、それに耳を傾けていたアドルフとエマも、どこか緊張した面持ちで音のしたほうを振り向く。


ガサッ ガサッ


「……あ」


ニャン


 そこから顔を出したのは


「チッ…猫かよ」


 一匹の、白い猫。


“ なんだ、猫…か…… ”

「まだ小さいわね…」

 そう言って白猫を抱き上げたレベッカは、一瞬だけ焦ったその胸を落ち着かせる。

「どこからか、この城に迷い混んだのでございましょうか」

「そうかもしれないわね…、でも…!……っ──」

 問いかけたエマに視線を戻したレベッカは、彼女の奥に見える…ある人影に気が付いた。



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