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略奪貴公子
第9章 招待状
それから彼は、チラリとその目を隣のアドルフに向けた。
「では失礼致します」
「……、待てよ」
「……」
「こんな場所で立ち話させるくらいなら、堂々と城の中に通した方が怪しまれない」
「……!」
立ち去ろうとするクロードを引き留めて、アドルフは横の二人に言った。
「伯爵を城に通す……?」
それは予想外の提案だったが、実のところ妙案である。
公爵が不在の今、他国の伯爵が城に訪ねたならば…もてなすのは夫人の役目。なんら不自然ではない。
「それなら二人で話すことも問題ないだろう?」
なのでエマも納得した。
立ち去ろうとしたクロードも
「…それはよい案です」
身体の向きをかえて戻ってくる。
「──…では……クロード=ミシェル・ジョフロワ・ド・ブルジェ、正式に謁見を申し込みます」
「……!」
「…公爵夫人へ」
「はい…宜しいですか?レベッカ様」
「…わかっ…りました」
こんな提案をして、アドルフはどういうつもりなのだろう。
レベッカだけが、その場の流れに納得していない様子だった。