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略奪貴公子
第9章 招待状


 ──


「迷惑ですか?私がいると」

 この応接室は、《 伯爵としての 》クロードが初めてレベッカと顔を合わせた場所。

 壁にかけられた絵画を眺めながらクロードが問いかけた。

「…あなたが目立ちすぎるからいけないのです」

 レベッカは小さな声で返事をした。

 目立ちすぎるから…だから、会っているだけで怪しまれる。

「迷惑…です…」

「……」

「──…きゃっ」


“ ………!”


 レベッカは後ろに振り返る。

 そして…クロードに掴まれた左腕に目をやった。

「…離してください」

「──そうして欲しいなら…抵抗しなさい」

 クロードは、彼女の瞳をまっすぐ見つめた。

「抵抗しなければ、私はこのままあなたを引き込み続ける…」

「……っ」

「手遅れになる前に逃げなさい」

「もう…っ、遅いじゃないですか…!」

「──…」


 手遅れっていつ…!?

 手放した筈だったのに

 女としての喜びもときめきも

 ずっとこの城の中で過ごしていれば、夢見ることも無かったはずの憧れを


「どうして連れ出したの…!?」


 乾ききった筈のわたしの涙を、どうしてあなたは溢れさせるの──?



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