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二重生活
第12章 cherry blossom
大通りから一本入った住宅街に、大きな公園があった。

西新宿の高層ビルの明りが遠くに見える。

傾斜をそのまま利用して作られた滑り台の遊具は、
てっぺんに一畳くらいのスペースがあって、真上には桜の枝が伸びていた。
まるで桜に囲まれた部屋みたい……。


「素敵……」

思わず息を飲む。

「いいとこ見つけたね」

シートの上に買い出ししたものを広げて、乾杯した。

触れられる距離にある桜の花が、上品な甘い香りを放っていた。

こんなふうに重なる奇跡みたいな偶然のせいにして、鞠香は罪悪感を追いやった。

ぴったりと寄り添うと、微笑んで抱き寄せてくれるから……。
楽しそうに話す顔を見ていると嬉しくなるから……。
ふいにされるキスが優しすぎるから……。

どうしても、彗君の隣にいたくなる。

「酔ったの? そんな潤んだ目で見上げられたらヤバイんですけど……」

「だって……一緒にいれるのが幸せすぎて……」

「もー、だから、そう言うこと言うと押し倒しそうになる……」

言いながらキスされた。
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