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二重生活
第14章 夢のあと
雄一が出社したあと家事をこなしていた鞠香は、ふと思った。
いつもの何倍も早く、全てが片付いていく。

体には力がみなぎって、生まれ変わったようにすっきりと身軽だった。
さっきまで鉛のように重かった心までもが、雄一になにも咎められなかったことで、確実に軽くなっていた。
そして、身勝手だけど、胸を占めていたのは感謝に似た気持ちだった。

何一つ不自由ない暮らし。
快適で居心地のいい部屋にいながら、彗君のアパートの狭いベッドを恋しく思い出す。

何もかもを失ってもいいと思っているわけじゃない。
そんな覚悟ができているわけじゃない。
それでも、触れあってしまったとき、その先に幸せしか見えなかった。
後悔するかもしれないとわかっていても、止められなかった。

<無事帰れたかな?さっきまで一緒いたのにもう会いてー〕

〔着いたよ。昨日は楽しかった。ありがとう>

<俺も。てか、寝不足だよね?〕

〔大丈夫よ。不思議と元気。またあとでね>

<少し早めに店行っとくから、もし来れたら来て〕

〔わかった>


そして、止める気も、きっとない……。
彗君がいない日々にはもう、戻れない。

たとえ、この場所になんの不満もなくても。
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