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二重生活
第14章 夢のあと
かなり早めにお店についてしまったのに、彗君はもう来ていた。
誰もいない店内で、挨拶より先に抱き締められた。

「やっと会えた……」

「おおげさ」

笑って言ったけど、鞠香も本当は同じ気持ちだった。

幸せで、ドキドキして、安心して、泣きたくなって、そんな気持ちすべてを腕にこめて力いっぱい抱きついた。

「彗君……苦しい?」

「全然。もっとして」

「…………苦しい?」

「ぜんっぜん甘いよ。こうだよ」

折れそうなほど強く抱き締められた。

「……苦しい!」

「ね? 俺の勝ち」

「……なんか、悔しい……」

「そう? 俺の方が好きって意味なんだけど」

さらっと言われて、言葉に詰まる。

赤くなった鞠香に、柔らかく微笑んで、

「明日、鞠香さん休みだよね? 今日は会えないかな。もう会ってるけど、終わったあと」

彗君がそう言った。
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