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二重生活
第14章 夢のあと
長い1日が終わり着替えを済ませると、彗君がスッと近寄ってきて、

「じゃあ、店出たら連絡するね」

と言った。

耳元で囁かれるだけで、腰のあたりがくすぐったくなる。
首をすくめた鞠香に、「あとでいっぱいキスしよーね」そう言って悪戯な笑顔を見せる。
意外とくるくる変わる表情一つ一つに、いちいちときめいてしまうのだった。


「ただいまポピー」

鞠香が帰ると、ポピーがゲージでピョンピョン跳ねた。
寝ていても、遊んでいても、帰ってくると必ずこうして迎えてくれるポピー。

「ただいま」

そのフワフワの小さな体を抱き締めた。
くぅ……ん……
嬉しそうに尻尾を振る姿に、ツキンと胸が痛む。

働き始めるまでは、いつも一緒だった。
いつも後ろをトコトコついてきて、鞠香の足元で丸くなる。
いつでも、信頼と親愛に満ちた瞳で見上げてくれる。

寂しい夜も、ずっとそばに寄り添っていてくれたポピー。
そのポピーに、寂しい思いをさせている。

雄一には、仕事がある。友達や趣味がある。
私には、……。


その時、ケータイが震えた。
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