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二重生活
第15章 スピカ
満開の桜を背景にした彗君の横顔は、いつも以上に美しく目に映った。
額から顎へ繋がる完璧な輪郭。
奥行きごとそのまま切りとって保存して、何度も繰り返し見ていたい……。

「ん?」

ふいに綺麗な瞳に見つめられて、焦ってしまった。

「見とれてた?」

からかうように聞かれて、思わず頷く。

「……かっこいいな……って思って……」

「……ちょ……っと、冗談だったんだけど。
……やべ。はずかしー。…………今こっち見ないで」

彗君は少し赤くなっていて、それがたまらなく愛しかった。

「イヤ。顔見せて?」

正面にまわって顔を見上げると、ぎゅっと抱き締められた。

「ダメ! 今はダメ。俺、なんかすげー照れてる!」

空を仰ぎ見ながら、頭を胸に抱き寄せてくる。
鞠香は、くすくす笑いながらおとなしくしていた。
同じように早鐘を打つ、心臓の音を聞きながら。

その時、「……あ。いいもん見っけた」と弾む声で彗君が言った。
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