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二重生活
第18章 存在論
たくさん飲んで話して夜も更けた頃、彗君からメッセージが届いた。

<お疲れ 今終わったよ〕

頬が緩んで、胸が温かくなる。

〔私も、そろそろ帰るところだよ>

<迎えに行ってもいい?〕

〔うん。嬉しい。ヴィトン側の道を向かうね>

会いたいなと思うタイミングで入った連絡。
沙織と別れ、彗君のもとへ急いだ。

「鞠香さん!」

向こうから走ってくる彗君が見えた。
見上げるほど背の高いその姿が、小さなポピーに重なる。
息を切らせて「おかえり。会いたかった」そう言う彗君に愛しさが込み上げた。

「彗君……。今日朝まで一緒にいてもいい?」

思わずそう言っていた。

「いいの?」

「一緒にいたいの」

彗君は黙って抱き締めてくれた。

一度帰ってポピーのトイレシートを取り換え、雄一のご飯を作って書き置きをした。
こんなに早く動けるんだと驚くほど俊敏に。


[沙織と飲みに行ってきます]


雄一が帰る頃、まだ料理は温かいだろう。
それにこの部屋は24時間換気され、密閉度も高いので、春夏秋冬、室内温度はほぼ変わらない。
一日家にいなかったことも、きっとわからない。

この時間から出掛けるなら、朝帰りも怪しまれないだろうと思った。

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