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二重生活
第19章 春眠
原宿駅を降り、タクシーに乗ろうとしてやめた。
ジミーやマロノは、歩くためより魅せるための靴だ。
雄一は、車やタクシーを当たり前のようによく使ったので、それが贅沢だと思わなくなっていたけれど……。
だけど、
今日はペタンコのパンプスだった。
たくさん歩いても疲れない、とても好みのデザインのパンプス。
(私は、無意識に雄一との習慣を、一つずつ脱ぎ捨てているのかもしれない……)
家に着き、静かにドアを開けて中に入った。
ケージでポピーが、ちぎれんばかりに尻尾を振って、ピョンピョンと跳ねていた。
「さみしい思いさせてごめんね……」
抱き上げ、ご飯をあげて、それから朝食を作り始めた。
まるで、昨日の朝と同じように……。
「おはよう。沙織ちゃんとゆっくりできた?」
眠そうにあくびをしながら、雄一が起きてきた。
「うん、楽しかったよ。すっかり話し込んじゃった。これからはもっと頻繁に会おうって話して別れてきた」
さりげなく、布石を打つ。
「そうか、よかったな。朝まで疲れただろ? シャワー浴びて少し寝たら?」
「ありがとう。そうする」
朝食をとる雄一の前に平然と座り、紅茶を飲んだ。
彗君の家で、シャワーを浴びていなくてよかったと思いながら。
身体に残る彗君の舌先の感触が、否応なくよみがえってくるのを、とめどない快楽の記憶がよみがえってくるのを、押さえ込みながら。
ジミーやマロノは、歩くためより魅せるための靴だ。
雄一は、車やタクシーを当たり前のようによく使ったので、それが贅沢だと思わなくなっていたけれど……。
だけど、
今日はペタンコのパンプスだった。
たくさん歩いても疲れない、とても好みのデザインのパンプス。
(私は、無意識に雄一との習慣を、一つずつ脱ぎ捨てているのかもしれない……)
家に着き、静かにドアを開けて中に入った。
ケージでポピーが、ちぎれんばかりに尻尾を振って、ピョンピョンと跳ねていた。
「さみしい思いさせてごめんね……」
抱き上げ、ご飯をあげて、それから朝食を作り始めた。
まるで、昨日の朝と同じように……。
「おはよう。沙織ちゃんとゆっくりできた?」
眠そうにあくびをしながら、雄一が起きてきた。
「うん、楽しかったよ。すっかり話し込んじゃった。これからはもっと頻繁に会おうって話して別れてきた」
さりげなく、布石を打つ。
「そうか、よかったな。朝まで疲れただろ? シャワー浴びて少し寝たら?」
「ありがとう。そうする」
朝食をとる雄一の前に平然と座り、紅茶を飲んだ。
彗君の家で、シャワーを浴びていなくてよかったと思いながら。
身体に残る彗君の舌先の感触が、否応なくよみがえってくるのを、とめどない快楽の記憶がよみがえってくるのを、押さえ込みながら。