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二重生活
第19章 春眠
雄一が家を出ると、身構えていた緊張が溶け、どっと疲れが押し寄せた。
シャワーを浴びて、寝室へ向かう。

まだ、雄一の温もりがそこには残っていて、鞠香は冷たい場所を選んで横たわった。

寂しい夜を際立たせたキングサイズのベッドだけど、今はツインにしておけばよかったとさえ思ってしまう。

今度、雄一に触れられたら、受け入れる自信がなかった。

彗君の部屋のシングルベッドで、寄り添って寝たのは、たった数時間か前のことだ。
狭いベッドに余白ができるくらい密着して、お互いの存在を確かめあった。
たった数時間前のことなのに、もう恋しくて仕方なかった。

私が二人いたらいいのに……、だけど、もう一人の私も彗君を好きになってしまうんだろうなと思った。
雄一の背中を見つめながらため息をついていたあの頃の私は、もういない。



<鞠香さん、大丈夫だった? もう寝た?〕

彗君からメッセージが入った。

ベッドに勢いよく起き上がり、正座してそれを読む。

〔起きてるよ。彗君は、今日も仕事だよね あと少しぐっすり寝ないとね>

<はーい〕

微笑みながら、本当はもう少し話していたかったなという気もした。
どんどん欲張りになっていく。

〔おやすみなさい>

短く、返信した。

<いいね、それ。おやすみなさいとか、いってらっしゃいとか、同棲してたら言い合えんのになー。こうやって離れてんのさみしー〕

この前、あんなに大人びたことを言って安心させてくれた彗君の弱音が、本音みたいで嬉しかった。

〔家を出る頃に、また連絡するね>

<わかった。そしたら、俺はおとなしく寝ますかね。鞠香さんも暖かくしてゆっくり休むんだよ〕

心にじんわり沁みる言葉。
彗君の、少し甘えん坊でマメなところを知るほど、その存在が必要不可欠だと感じた。
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