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二重生活
第20章 GW
ほんのり漂う、畳とお香の香り。
和モダンな雰囲気のラグジュアリーなインテリア。
目前に雄大な連山と渓流の絶景が広がるテラスには、ハート型の露天風呂。
そこから続くベッドルーム。

「すっごく素敵!」

鞠香は部屋中をパタパタと走り回って歓声をあげた。


「ははっ。鞠香さんのそういうとこ、やっぱり新鮮」

「あは。浮かれちゃった」

「いいよ、俺にだけ見せてくれる顔がいっぱいあったほーが嬉しー」

柔らかい笑顔。
(きっと、初めての旅行だから、すごく無理してくれたんだろうな……)
愛しさが込み上げて、近寄ってそっと彗君を抱き締めた。

「ありがとう。彗君。本当に、すごく、嬉しい……」

「そんなことしたら、今すぐ押し倒したくなるからダメだよ」

そう言って手をとると、

「着替えて足湯しよっか」

彗君は、浴衣に着替えはじめた。
逆光の中、細身なのに引き締まった身体の、美しい輪郭が浮かび上がる。

「私っ……恥ずかしいから、向こうで着てくるね」

(彗君……本当にかっこよくて素敵すぎる……。どうしよう、今更だけど緊張してきちゃったよ……)

浴衣に着替え終えても、なかなか出ていけなくて躊躇うこと、数分。

おずおずと部屋へ向かうと、彗君は少しだけ赤い顔で鞠香を見つめて……

「そんなに見られると照れちゃう」

袖で顔を隠した鞠香を抱き寄せた。

「こっちおいで」

露天風呂の縁の椅子に並んで座って、足を浸した。
ペディキュアがお湯の中で色鮮やかに揺れている。

「綺麗だね」

「手とお揃いのデザインにしたの」

「うん。ネイルも浴衣も似合ってる、ほんと、鞠香さんすげー綺麗。
やっぱり……我慢しないでいい?」
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