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二重生活
第3章 CAFE a.m.
休憩時間になり、スタッフルームで休んでいると、雄一から連絡が入っていた。

【初日どう? 鞠香のことだからそつなくこなしてると思うけど。俺も今度顔出すよ。頑張って】

ありがとう……心の中で呟いたとき、

ガチャリ

ドアが開いて、彗君が入ってきた。

「鞠香さん、よかったらこれ」

彗君が淹れてくれたのは、甘くて少しだけほろ苦いジンジャーミルクティだった。
心がほっこりして、癒されるあったかいミルクティ。

「ありがとう」

今度は声に出して言った。

目があって、なんとなくお互い微笑んだ。
ちょっと恥ずかしくて、鞠香はお姉さんぶって、

「彗君は偉いよね! しっかり自分の将来を見ながら行動に移していて」

そう言うと、

「行動はしてるけど、実際、そんなに色んな味を知らないというか、鞠香さんこそすごいですよ。味見しただけで何が入ってるかだいたいわかってたし」

「そうね、でもそれは、単にいろんなお店に行って、たくさんのものを食べた食いしん坊なだけで……あ」

「そうなんです。いろいろ食べてみることってすごく大事なことなんです。俺、けっこう気後れしちゃうんで、ぜひおすすめのお店にお供させてもらえたら嬉しいです」

「うふふ。お供って、桃太郎じゃないんだから」

「たしかに。……ん、きびだんごって、すげーまずいの知ってます?」

「えー、知らない」

「あれで鬼退治にかり出されるなんてやだな……」

狭い部屋に、二人の笑い声が響いていた。
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