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二重生活
第4章 初めて
フレンチ、イタリアン、エスニック……、迷ったけど、スパニッシュにすることにした。
大人になって、何かを食べて感動することは少なくなったけど、最近衝撃的においしいスペイン料理のお店を見つけたのだ。
雄一に教えられたお店ではないというのも、理由の一つだった。
だいぶ早く着いたのに、改札を抜けたところに彗君を見つけた。
端正な顔が、ゆるゆると笑顔になって……
そこだけ光が当たったように眩しくて、他の景色がさっと背景に変わったように見えた。
(まいったな、反則だよ)
いつもはクールで全然人を寄せ付けない雰囲気なのに、こんなにも人懐っこい笑顔を見せるなんて。
手招きされて、少し距離を置いて並んで歩く。
「よかった、来てくれた」
身体の右側がこそばゆくて、歩き方を忘れてしまいそう。
「うん。てか……彗君って、オシャレなんだね」
「鞠香さんも、大人っぽくて……可愛い……ってなんだこれ、照れるね」
「そだね……照れる」
働いているときの、白いシャツにカフェエプロンというスタイルもよく似合っていたけど、
黒ベースのコーディネートにヘリンボーンのワークキャップをかぶった私服姿は、また素敵だった。
お店は駅前の喧騒を抜けたところにある。
その静けさが、胸の高鳴りを加速させていく。
重厚な扉を開けると、異国情緒溢れる空気と音楽に包まれた。
赤く美しい色艶のテラコッタと、カラフルなスペインタイルの床。
アイアンの無機質さが、色とりどりのランプを引き立てていた。
立ち込める妖艶な熱気に、ぐっと体温が上がるのを感じた。
大人になって、何かを食べて感動することは少なくなったけど、最近衝撃的においしいスペイン料理のお店を見つけたのだ。
雄一に教えられたお店ではないというのも、理由の一つだった。
だいぶ早く着いたのに、改札を抜けたところに彗君を見つけた。
端正な顔が、ゆるゆると笑顔になって……
そこだけ光が当たったように眩しくて、他の景色がさっと背景に変わったように見えた。
(まいったな、反則だよ)
いつもはクールで全然人を寄せ付けない雰囲気なのに、こんなにも人懐っこい笑顔を見せるなんて。
手招きされて、少し距離を置いて並んで歩く。
「よかった、来てくれた」
身体の右側がこそばゆくて、歩き方を忘れてしまいそう。
「うん。てか……彗君って、オシャレなんだね」
「鞠香さんも、大人っぽくて……可愛い……ってなんだこれ、照れるね」
「そだね……照れる」
働いているときの、白いシャツにカフェエプロンというスタイルもよく似合っていたけど、
黒ベースのコーディネートにヘリンボーンのワークキャップをかぶった私服姿は、また素敵だった。
お店は駅前の喧騒を抜けたところにある。
その静けさが、胸の高鳴りを加速させていく。
重厚な扉を開けると、異国情緒溢れる空気と音楽に包まれた。
赤く美しい色艶のテラコッタと、カラフルなスペインタイルの床。
アイアンの無機質さが、色とりどりのランプを引き立てていた。
立ち込める妖艶な熱気に、ぐっと体温が上がるのを感じた。