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二重生活
第1章 鞠香
雄一と出会ったのは、受付に配属された初仕事の日で。
大手企業だけあって、ひっきりなしの来客、優雅なのにてきぱきと仕事をこなす先輩に、圧倒されっぱなしの一日だった。
「君が宮野さん? 可愛い子が受付にいるって噂だったから、さっき見に行ったらいなくて、がっかりしてたんだ」
更衣室へ向かいながら不甲斐なさに落ち込んでいたとき、部下を従えて歩いてきた雄一は、大きな声で言って朗らかに笑った。
言葉に反して、なんの邪心も下心もない屈託のない笑顔に、張りつめていたものが一気に解け、力が抜けたのを今でも覚えている。
それからも、雄一はちょくちょく顔を出しては、面白いことを言って鞠香たちを笑わせては、ただそれだけで立ち去っていった。
豪快で面白い人。
はじめはそれだけだった存在が、気がつけば、会いに来てくれるのを待つようになっていた。
そして、初めて食事に誘われた夜、突然プロポーズされたのだった。
独立すること、そんな自分の夢をサポートしてほしいと。
鞠香は、頷いていた。
驚くより先に。
この人なら、幸せにしてくれると思った。
この人となら、幸せになれると思った。
大手企業だけあって、ひっきりなしの来客、優雅なのにてきぱきと仕事をこなす先輩に、圧倒されっぱなしの一日だった。
「君が宮野さん? 可愛い子が受付にいるって噂だったから、さっき見に行ったらいなくて、がっかりしてたんだ」
更衣室へ向かいながら不甲斐なさに落ち込んでいたとき、部下を従えて歩いてきた雄一は、大きな声で言って朗らかに笑った。
言葉に反して、なんの邪心も下心もない屈託のない笑顔に、張りつめていたものが一気に解け、力が抜けたのを今でも覚えている。
それからも、雄一はちょくちょく顔を出しては、面白いことを言って鞠香たちを笑わせては、ただそれだけで立ち去っていった。
豪快で面白い人。
はじめはそれだけだった存在が、気がつけば、会いに来てくれるのを待つようになっていた。
そして、初めて食事に誘われた夜、突然プロポーズされたのだった。
独立すること、そんな自分の夢をサポートしてほしいと。
鞠香は、頷いていた。
驚くより先に。
この人なら、幸せにしてくれると思った。
この人となら、幸せになれると思った。