この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
二重生活
第7章 rose
サングリアを注ぎながら、あの日のキスを思い出す。
急に静かになった部屋は、鼓動の音すら響いてしまいそうで、鞠香は音楽をかけようと席を立った。
クラシックは静かすぎるしジャズはムードが出すぎてしまう。でも、陽気なリズムは上滑りしそうで……。
結局、アッパー系の曲も、しっとり甘いメロウな曲も入った、R&Bのコンピレーションアルバムをかけた。
お酒がまわった体に、心地よく音楽が染み渡る。
会話も膨らんで、やっぱり彗君といると楽しいと思った。
「鞠香さん、さっき直人が言ってたこと……」
「ん?」
「俺もそう思う。鞠香さんはなんでも持ってるなぁって」
「……恵まれてるとは思う。感謝もしてるよ」
「そっか、そーだよね」
「……でも。……ううん」
「でも、何?」
「…………」
その先の言葉なんて、言えるはずなかった。
下を向いていると、彗君が隣の席に座った。
「鞠香さんは、幸せ?」
「どうして……そんなこと……聞くの?」
「鞠香さんに、隙間があるとしたら……。俺がそこを埋めちゃだめかな? 寂しいときだけでもいい。眠れない一人の夜だけでもいい。店でだけじゃなくて、こうして二人っきりで会いたい……
俺が、会いたいんだ……」
顔をあげると、まっすぐな瞳がこちらを見ていた。
引き込まれてしまいそうな、綺麗な瞳……。
「彗君……」
鞠香の潤んだ瞳を見下ろす真剣な顔が、ゆっくり近づいてくる。
ダメ……。きっと、引き返せなくなる……。
そう思っているのに、その瞳から目が離せなかった。
目を閉じると、シャンデリアの灯りが瞼の裏でチカチカと光っていた。
唇に降りてきた温もりに、目眩がするほどの幸福感を感じて、どれだけこうしたかったかと思ったら、涙が出た。
急に静かになった部屋は、鼓動の音すら響いてしまいそうで、鞠香は音楽をかけようと席を立った。
クラシックは静かすぎるしジャズはムードが出すぎてしまう。でも、陽気なリズムは上滑りしそうで……。
結局、アッパー系の曲も、しっとり甘いメロウな曲も入った、R&Bのコンピレーションアルバムをかけた。
お酒がまわった体に、心地よく音楽が染み渡る。
会話も膨らんで、やっぱり彗君といると楽しいと思った。
「鞠香さん、さっき直人が言ってたこと……」
「ん?」
「俺もそう思う。鞠香さんはなんでも持ってるなぁって」
「……恵まれてるとは思う。感謝もしてるよ」
「そっか、そーだよね」
「……でも。……ううん」
「でも、何?」
「…………」
その先の言葉なんて、言えるはずなかった。
下を向いていると、彗君が隣の席に座った。
「鞠香さんは、幸せ?」
「どうして……そんなこと……聞くの?」
「鞠香さんに、隙間があるとしたら……。俺がそこを埋めちゃだめかな? 寂しいときだけでもいい。眠れない一人の夜だけでもいい。店でだけじゃなくて、こうして二人っきりで会いたい……
俺が、会いたいんだ……」
顔をあげると、まっすぐな瞳がこちらを見ていた。
引き込まれてしまいそうな、綺麗な瞳……。
「彗君……」
鞠香の潤んだ瞳を見下ろす真剣な顔が、ゆっくり近づいてくる。
ダメ……。きっと、引き返せなくなる……。
そう思っているのに、その瞳から目が離せなかった。
目を閉じると、シャンデリアの灯りが瞼の裏でチカチカと光っていた。
唇に降りてきた温もりに、目眩がするほどの幸福感を感じて、どれだけこうしたかったかと思ったら、涙が出た。