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二重生活
第8章 春風
「わぁ、綺麗」
テレビ中継で映る桜に、釘付けになった。
桜の蕾は、一つほころんでしまうと、満開になるのは早かった。
その日、鞠香は朝からウキウキとしていた。
代官山と恵比寿にある系列店とも合同のお花見の日。
自由参加だったけど、待ち合わせ場所の代々木公園噴水まえに、表参道店のメンバーは勢揃いしていた。
彩名ちゃんが近寄って来て、耳打ちする。
「鞠香さん。恵比寿店に、リョウっていう芸能人ばりのイケメンがいるんです。読モ仲間も彼目当てで通ってるくらいの。でも、とりあえずかなりチャラいんで、気を付けてくださいね! なんかされたらすぐ言ってください」
頼もしい言葉に吹き出してしまう。
天使のようにフワフワした雰囲気の彼女は、知れば知るほど男前で面白くて、素敵な子だった。
「大丈夫よ。結婚してるし、若くて可愛い子もいっぱい来るだろうし、相手にもされないと思う」
「もう! わかってないです。鞠香さん。今時人妻でも気にしない男や、女は30前後だって言う男、ほんと多いんですから。鞠香さんなんて、綺麗だからなおさら。とにかく、リョウには気を付けてくださいね」
「わかった。ありがとう」
リョウ君ね……。
きっと何事もないとは思うけど、一応名前だけは覚えておこう、鞠香がそう思っていると、彗君が近寄ってきた。
「おはよう鞠香さん。晴れてよかったね」
カーキ色のボタンダウンシャツにアイスグレーのパーカーを羽織った彗君は、春らしい柔らかな雰囲気を纏っていた。
「ね。昨日楽しみすぎて、なかなか眠れなくて、雨が降る夢まで見ちゃったもの」
「あはは。そっか。てか、鞠香さん、なんか荷物多くない?」
「カセットガスストーブ持ってきたの。寒いかなって思って」
「…………心配性?」
「かなり……」
「俺は、絶対晴れると思ってたよ」
彗君が笑うと、笑顔のまわりに光の粒子が見える。
テレビ中継で映る桜に、釘付けになった。
桜の蕾は、一つほころんでしまうと、満開になるのは早かった。
その日、鞠香は朝からウキウキとしていた。
代官山と恵比寿にある系列店とも合同のお花見の日。
自由参加だったけど、待ち合わせ場所の代々木公園噴水まえに、表参道店のメンバーは勢揃いしていた。
彩名ちゃんが近寄って来て、耳打ちする。
「鞠香さん。恵比寿店に、リョウっていう芸能人ばりのイケメンがいるんです。読モ仲間も彼目当てで通ってるくらいの。でも、とりあえずかなりチャラいんで、気を付けてくださいね! なんかされたらすぐ言ってください」
頼もしい言葉に吹き出してしまう。
天使のようにフワフワした雰囲気の彼女は、知れば知るほど男前で面白くて、素敵な子だった。
「大丈夫よ。結婚してるし、若くて可愛い子もいっぱい来るだろうし、相手にもされないと思う」
「もう! わかってないです。鞠香さん。今時人妻でも気にしない男や、女は30前後だって言う男、ほんと多いんですから。鞠香さんなんて、綺麗だからなおさら。とにかく、リョウには気を付けてくださいね」
「わかった。ありがとう」
リョウ君ね……。
きっと何事もないとは思うけど、一応名前だけは覚えておこう、鞠香がそう思っていると、彗君が近寄ってきた。
「おはよう鞠香さん。晴れてよかったね」
カーキ色のボタンダウンシャツにアイスグレーのパーカーを羽織った彗君は、春らしい柔らかな雰囲気を纏っていた。
「ね。昨日楽しみすぎて、なかなか眠れなくて、雨が降る夢まで見ちゃったもの」
「あはは。そっか。てか、鞠香さん、なんか荷物多くない?」
「カセットガスストーブ持ってきたの。寒いかなって思って」
「…………心配性?」
「かなり……」
「俺は、絶対晴れると思ってたよ」
彗君が笑うと、笑顔のまわりに光の粒子が見える。