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二重生活
第9章 fall in love
体の中で、熱が蠢いていた。
耳の奥に、ドクドクと波打つように走る血流を感じる。
すべてがスローモーションに感じられて、ふわふわと現実味がなかった。

みんなが盛り上がり、ふざけあっているのを見つめながら、

「あっちで飲んできたら?」

そう言っても「俺は鞠香の顔見てたいの」と言って、片時もそばを離れてくれないリョウ君……。

彩名ちゃんは、直人君と楽しげに話している。あの二人、意外とお似合いかも……ぼんやりとした頭でそう思った。

彗君は相変わらず女の子に囲まれている。


そのとき、男の子たちが近寄って来て、

「リョウ、お前ロックオンしすぎだろー」

大きな声で言った。

「だって、綺麗なんだから仕方ないだろ。ドストライク」

リョウ君も大きな声で言う。鞠香は恥ずかしさに居たたまれなくなって、下を向く。

「でも、お前さ……」

「俺、結婚してるとか全然気にしないよ。こんなに可愛いんだから、むしろしてて当然だもん。子供がいるならまだしも、奪えるものは、奪うし」

「まじかよ、リョウ。肉食度合いはんぱねーな。気を付けてくださいね。ってか、こっちでみんなで飲みます?」

赤い顔で人懐っこく誘ってくれるこの男の子は、きっととてもいい子なんだと思う。
せっかくの機会だし、みんなとももっと話してみたかった。

それでも、鞠香はそれを断った。




命令その2。「俺のそばを離れないで」

リョウ君の横顔が、命令は絶対だと伝えていた。
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