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あなたに抱かれたい
第10章 夫のいない生活

「ええ、先日に入籍しました
あ、もちろん初婚ではなく再婚なのですが」

「初婚だろうが再婚だろうが、そんな細かいことで君の評価が下がる訳じゃないよ」

「はあ、恐縮です」

「弊社はこの度、海外プロジェクトを充実させることになってね」

事業本部長が分厚い資料のファイルをテーブルに滑らせて拓哉に受けとれと命じた。

「君は知っているかね?ウチの会社は中東アジアとのパイプが弱いってことを…」

「いえ、そんな何ぶんにも国内の営業オンリーだったものですから」

「うむ、細かいことはそのファイルにすべて網羅してあるんだがね…中東アジアとのパイプの開拓を君に託したいと考えておるのだよ」

「それってつまり…」

「ああ、現地に飛んでくれないか?」

くれないか?という尋ねる言葉遣いだが、三人の役員の目は何がなんでも拓哉を中道アジアに出向させようとしていた。

「私が…出向?」

「そんな懐疑的な目をしなくてもいい。なにもヨルダンや紛争地域に行ってもらうつもりはないよ。君に行ってもらいたい国はドバイだ」

出張ではなく出向というからには1週間どころではないのは容易に理解できた。

「お言葉を返すようですが、私は先妻との間に二児を設けておりまして…上の子が大学受験、下の子が高校受験と大事な時期に差し掛かっております。
今、私が長期に渡って家を留守にするわけには…」

「そのための奥さんだろ?単身赴任ですむ話じゃないか
後の事は奥さんに任せておけばいいだろ」

「悪い話じゃない、これはね、出世コースなんだよ
ここにいる私たちも、それぞれ海外での単身赴任を経てこのようなポストに就けたと言っても過言ではない」

出世…その言葉をちらつかせておけば断ることはないだろうというニュアンスに拓哉は腹が立った。

「それで…その、出向期間はどれぐらい…」

「おっ!前向きに検討してもらえるんだね?
会社としては中東のネットワークを形成するまでお願いしたいんだ。そう、まずは一年間は頑張ってもらいたいところだがね
もちろん、うまくいかなきゃ二年、三年とかかるだろうが、そこは焦らずにしっかりと腰を据えてもらいたいんだがねえ」

「大丈夫、ご家族の事は私らでフォローするから」

ウンと言うまでこの部屋から出さないぞという雰囲気に包まれた。
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