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あなたに抱かれたい
第10章 夫のいない生活
その夜、拓哉の帰宅は、かなり遅くなった。
待ちくたびれて久美子はすでに寝ているだろうと思っていたが、静かに玄関を開けると奥の部屋からパタパタとスリッパを履き鳴らして「あなた、お帰りなさい」と出迎えてくれた。
「なんだ、まだ起きていたのか?」
「だって、旦那様が頑張って働いているのに先に休むなんてできないわ」
可愛い…本当によくできた女だ。
そんな溺愛の彼女を残して出向なんてしたくはないと思ったが、役員たちに粘られて、拓哉はついに出向を受け入れてしまっていた。
「ちょうどいい、久美子に話があるんだ」
ダイニングテーブルに座ると「君も座りなさい」と向かいの席に久美子を座らせた。
「どうしたの?改まっちゃって…」
「会社から出向を命じられた」
「あら、じゃあ引っ越さなきゃいけないの?」
久美子は日本のどこかに出向すると思ったようで、家族で家を移り変わらねばと思っているようだ。
「いや、君と子供たちはこのままここで生活していくんだよ」
「それって…」
「そう、単身赴任ってやつだ」
拓哉は出向先が海外のドバイだと告げて、長期に渡る出向を彼女に言い聞かせた。
「いやよ!そんな…あなたのいない生活なんて考えられないわ!それに、子作りはどうするのよ?そんなんじゃいつまでたっても子供を授けてもらえないわ」
「ずっと向こうにいる訳じゃない。
定期的にバカンスをいただいて帰国するから。
夏と冬にはそれぞれ二週間ほど日本に滞在するから、その時にしっかりと子作りをしようじゃないか」
久美子とて、短期間といえどもOL経験者だから会社の辞令というものがどうにも抗えないということは知っていたが、新婚早々引き裂かれるのは耐えきれなかった。
「だいたい、そういう大事なことを家族に相談も無しにどうして了承したのよ!普通はさ、家族と話し合いますと時間をもらうのが普通でしょ!」
「即決すれば出向が終われば部長職を約束してくれたんだ。
課長を飛び越えて部長だぞ!わかるかい?今よりもずっと給料も上がるし、仕事のやり甲斐があるんだ」
「そう!あなたは家族との時間よりも仕事を選んだのね!
いいわ!勝手にすればいいわ!」
興奮しているものだから大きな声の口論となる。
それは二階で寝ているはずの茉優と正弥の耳にも届いていた。

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