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あなたに抱かれたい
第10章 夫のいない生活
翌朝、茉優と正弥がキッチンに入って行くと、父の拓哉と継母の久美子はすでにテーブルについていてコーヒーを飲んでいた。
二人とも目が真っ赤でほとんど寝ていないことが一目瞭然であった。
「あ、おはようございます
二人とも今朝は早いのね…待っててね、今すぐ朝食の用意をしますから」
久美子は、いかにもさりげなさを取り繕って目玉焼きを作り始める。
「正弥、茉優…お前たちに話しておかなければいけないことがある」
拓哉は姉弟と目を合わさずに、まるで独り言のように話し始めた。
「単身赴任の事だろ?」
拓哉が話すよりも先に正弥が単身赴任の件を喋りだしたものだから父の拓哉は驚いた。
「知っていたのか?」
「当たり前じゃん、夜中に大きな声で夫婦喧嘩するんだもん、イヤでも聞こえてしまうよ」
「茉優も…聞いていたのか?」
茉優はオレンジジュースを飲みながら無言でコクリとうなづいた。
「二人とも知っているんなら話が早い、
父さんは海外赴任することになったから」
「どうぞご自由に」
茉優が割れ関せずと返答をするものだから拓哉としては拍子抜けした。
昨夜の久美子のように「どうしても行かなきゃいけないの?」とも「私も一緒について行く」というような駄々をこねられたらどうしようかと思っていただけに、やけにあっさりと単身赴任を許してもらえたことにホッとすると同時に何だか寂しかった。
「こっちの事は心配いらないからさ、俺だってもう子供じゃないんだから男として立派に留守を守ってやるよ」
ついこの間まで子供だとばかり思っていたが、正弥が男らしく堂々と成長してくれたことに感謝した。
子供たちはしっかりと現実を理解して快く単身赴任を許してくれたのに対して、妻の久美子はいまだに納得できないかのようにずっと無言を決め込んでいた。
「母さん、心配しなくても、ちゃんと僕が父さんの役割を引き受けるから」
正弥としては力仕事などの男手が必要なときは任せろという意味合いで言ったつもりだが、茉優は小声で「あんた、まさか久美子さんと一緒に寝るつもりじゃないでしょうね?」と鬼の形相で正弥を睨み付けた。

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