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あなたに抱かれたい
第10章 夫のいない生活

それから準備期間の二週間はあっという間に過ぎた。
ドバイに旅立つのはお昼の便なので、当然正弥と茉優は学校にいかなくてはいけないので見送りにいかないことにした。

「あの子達、薄情だわ。しばらく会えなくなるのにお見送りもしないなんて」

「いいんだよ、空港で別れようが、この家で別れようがたいした事じゃない」

大きなトランクを玄関から転がしていると、時間通りに迎えのタクシーがやって来た。
その様子を庭掃除をしているお隣の間宮が目ざとく見つけて「おや、ご旅行ですか?」と声をかけた。

「あ、おはようございます。いえ、出張なんですよ。それも長期の出張。おかげでこんな大荷物になってしまいました」

「そうですか…長期のねえ…
あ、奥さん、男手が必要な時はいつでも声をかけてくださいな」

「ありがとうございます。でも、うちには中学生の男の子もいますし…」

「いや、ご遠慮なさらずに。男の子なんて用事を頼むとフイとどこかへ出掛けてしまいますからね」

「久美子、お隣さんの言う通りだ。
正弥なんてまだまだ当てにできないよ。
そんなわけで何かありましたら声を掛けさせていただきますので、その時はよろしくお願いします」

拓哉にしても用心のためにお隣さんには自分が長期に渡って留守にすることを知っておいてもらった方が安心だと思った。

「ええ、ご安心ください。ご心配なく、何かあればすぐに駆けつけますので」

ありがとうございますと一応久美子も頭を下げたけれど、どうにもお隣のこの男とは仲良くやっていけそうもないので、極力関わらないでおこうと思った。

やがて拓哉を乗せたタクシーは無情にも遠く去っていった。

「奥さん、本当に困った事があったらいつでも声をかけてくださいよ」

拓哉を見送った久美子が玄関に入ろうとする背後から執拗に声をかけて、お隣の間宮はいやらしい目つきで久美子の揺れるヒップを眺めながらそう言った。

久美子は振り向きもせず、ペコリと頭だけ下げて急いで玄関に飛び込んだ。
『本当に気の利かない男だわ!あいつさえいなければちゃんとお別れのキスをすることが出来たのに』
久美子は玄関に入ると地団駄を踏んで悔しがった。
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