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あなたに抱かれたい
第12章 年末年始

年末の篠塚家の朝…
この日は腕によりをかけておせち料理の仕込みに取りかかる予定だったのだが、久美子はそれどころではなく、スーツケースに夏物衣料を詰め込んで旅立つ支度に慌てていた。

冬休みということで目覚めの遅い茉優と正弥がようやく起き出してきたが、当の久美子は朝食の用意どころではなかった。

バタバタと動き回る久美子を見て「久美子さん…どこかへ出掛けるの?」と自分で食パンをトースターに放り込みながら正弥が訊ねた。

「正弥くんも茉優ちゃんもごめんなさい!
私、あなたたちとお正月を迎えられなくなっちゃいました」と詫びて深々と頭を下げた。

「えっ?どういうこと?」

茉優もコーヒーメーカーをセットして怪訝そうに訊ねる。

「四人揃ってお正月を迎えるはずが、拓哉さん…あ、いや、お父さんがね…帰ってこれなくなっちゃったのよ」

「え~っ?マジかよ!」

ショックだとばかりに正弥はガクッとうなだれた。

「あんたがショックなのは、パパが帰ってきてみんなで初詣に行けなくなった事じゃなくて、パパからお年玉が貰えなくなった事でしょ?」

だから、あんたはいつまでもガキだと思われるのよと
コーヒーメーカーから淹れたてのコーヒーをカップに注ぎながら茉優が正弥を小バカにした。

「そんなわけだから…私…拓哉さん、いえ、お父さんに会いに行くこと決めたの!」

「えっ?じゃあ、僕らもドバイに行けるの?」

「連れていってあげたいのはやまやまなんだけど…
ほら、正弥くんは受験勉強の追い込みだから連れていけないし…茉優ちゃんには正弥くんの面倒を見てもらいたいから、申し訳なんだけど、今回は私だけ行かせてちょうだい」

「え~っ!?そんなのズルいじゃん!」

なあ、姉ちゃん、姉ちゃんだってそう思うだろ?と姉の茉優に同意を求めたが「いいわ、私たちに気兼ねなく行ってきて
後の事は私に任せてくれればいいから」とアッサリと居残りを了承した。

「本当?助かります…
この借りは拓哉さんが帰ってきたらちゃんと支払うように言っておきますから」

そう言うと荷造りの仕上げをするために、久美子は慌ててい自室に戻っていった。
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