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あなたに抱かれたい
第12章 年末年始

高級ホテルの一階のテナントにアーヤが薦めるエステサロンがあった。

「マダム、お客様をお連れしましたよ」

「あら?アーヤ、ずいぶんと久しぶりじゃない。
お客様を紹介してくれるのは嬉しいけれど、こんな大晦日の日に来たって予約でいっぱいよ」

「そこを何とかお願いしたいのよ
ほら、海外からのお客さまよ、お店をアピールするにはもってこいでしょ」

「仕方ないわね…他ならぬアーヤの頼みですものね…
お客様、ショートコースでよろしい?」

アラビア語で会話されているものだから、微笑みを浮かべて久美子に向かってそう言われても何の事だかさっぱり要領を得ない。

「奥さま、ショートコースでよければ施術してくださるそうよ」

ポカンとしている久美子にアーヤが通訳してくれて、ようやく久美子は「サンキュー」と笑みを返した。

「さあキャップ、奥さまの施術が終わるまで私たちは明日のミーティングをしましょう」

そう言って夫の拓哉が秘書のアーヤに連れ出されてサロンの外に行ってしまう。
一人で残された久美子は急に不安になって、二人の後を追いかけたいと思ったが、マダムが「さあ、どうぞこちらへ」と言うニュアンスで久美子の腕を取ってサロンの奥に引きずり込まれた。


「久美子を一人だけ残しておいて大丈夫かな?」

ホテルのエントランスへ向かうエスカレータに乗りながら、名残惜しそうに拓哉は階下を振り向いて呟いた。

「子供じゃないんですから大丈夫ですわよ
それにマダムとの施術中はただ寝ていればいいだけなんですから言葉が通じなくても大丈夫ですから」

アーヤにそう言われて、それもそうかなと拓哉はおとなしくアーヤの後ろについてホテルのエントランスに足を運んだ。

「マネージャー、お部屋を借りたいの」

スタスタと迷いなくアーヤはホテルのカウンターに歩み寄ると、支配人らしき風貌の男に気安く声をかけた。

「これはこれはアーヤじゃないか
大晦日ってのに客を掴まえて商売かい?」

「人聞きの悪い事を言わないでよ
コールガールは卒業したの、今は彼の秘書よ」

そう言ってアーヤは堅気だと言わんばかりに拓哉をホテルのマネージャーに紹介した。

「宿泊は予約でいっぱいだよ、チェックインの客がやってくる前の午前中だけならお部屋をお使いください」

そう言ってマネージャーはカードキーをカウンターの上に滑らせた。
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