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あなたに抱かれたい
第12章 年末年始

「それでは明朝、10時にお迎えにまいります」

アーヤはそう言って拓哉と久美子とはマンションの前で別れた。

「よくできた秘書さんね」

アーヤの後ろ姿を見送りながら久美子がポツリと呟く。

「ああ、本当によくできた女性だよ
何から何まで彼女に任せておけばいいのだから上司としては楽チンさ」

「ふぅ~ん…何から何までね…」

何だかイヤミっぽく話す久美子に、疲れて口調がキツくなっているのだろうと聞き流した。

夕食はデリバリーで簡単に済ませた。

「あなた、食事はいつもこんな風にデリバリーなの?」

「ああ、そうだね」

「栄養のバランスとか気をつけてね。それでなくとも成人病のリスクがアップする年頃なのに…」

「そこのところは大丈夫さ
ほら、秘書のアーヤがね、たまに訪ねてきてくれて夕飯を作ってくれたりしているから」

「まあ!そんなことまで!?
それって業務を逸脱しているんじゃないの?」

「そうかもしれないな」

「食事の面倒だけ?」

「ああ、そうだよ。掃除はハウスキーパーを雇っているしね」

「お洗濯は?」

「それは溜まった頃にアーヤがしてくれるし…」

「何から何までアーヤなのね!
あの人は何?単なる秘書?まるで家政婦…いいえ、まるで彼女みたいだわ!」

そう言って、ほとんど食事に手もつけずに、久美子は寝室に飛び込んでしまった。

「おい!何を膨れっ面しているんだよ?」

久美子の態度に、少しばかり拓哉の口調もキツくなる。

「さっきまで上機嫌だったのにどうしたって言うんだよ!
何か不満でもあるのかい?ちゃんと言葉にして言ってくれないとわからないじゃないか!」

拓哉が放った言葉に反応するように、寝室のドアがバンっと開いて、ずかずかと久美子が拓哉の元に歩み寄ってくる。
その顔は美しさを通り越して凄みさえ醸し出していた。

バサッ!

久美子が白い布を拓哉に叩きつけた。
何だこれは?と手にして広げてみると枕カバーだった。

「匂いを嗅いでみなさいよ!」

久美子が腕を組んで仁王立ちになっている。
弁解があるのなら聞いてやろうじゃないと目がそう言っていた。

「匂いを嗅ぐ?」

仕方なしに、拓哉は枕カバーをクンクンと匂ってみた。

『ハッ!こ、この匂いは…』

紛れもなく甘いカモミールの香り…
そう、アーヤが好んでつけている香水の香りだった。
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