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第1章 凌辱

渡辺は席を立ち、美幸を促した。

「…はい……」

美幸は俯いたまま、力なく頷き、渡辺に続いて椅子から立ち上がった。

喫茶店を出た二人は、駅の賑やかな方向とは反対の、人通りの少ない裏通りへと進んだ。

渡辺の一歩後ろを思い足取りで歩きながら、美幸の心は激しく揺れ動いていた。

（本当に、これでいいのだろうか…？）

良心が叫ぶ。しかし、その叫びを、美幸は必死で抑え込んだ。

（主人のため…主人を救うためだ。今回だけ、少しだけの我慢…）

美幸は、その言葉を無理やり自分に言い聞かせ、歩を進めた。

５分も歩かないうちに、二人の視界には、派手な造りの建物が不規則に並ぶホテル街が見えてきた。平日の昼間で人影は少ないとは言え、美幸は生まれて初めて足を踏み入れる、この場所の雰囲気に、極度の緊張を覚えた。

（こんな所を、誰かに見られたら…）

その羞恥心と後ろめたさから、美幸は自然と人目を気にするように俯き加減になってしまう。

渡辺はそんな美幸を横目で見ながら、内心でさらに期待を高めていた。

（この奥さんときたら、この場にいるだけで怯えて、こんなに人目を気にしている。まったく世慣れていない、純粋で貞淑な奥さんだ。そんな女が、俺の要求で、夫のために堕ちていく…これ以上の興奮があるか）

渡辺は、美幸の動揺と初々しさが、この後の背徳的な行為のスパイスになると確信していた。美幸を一瞥すると、目的のホテルへと足を向けた。

渡辺は、少し歩いた先にある一軒の建物の前で立ち止まった。

その建物は、周囲の派手な造りに比べれば幾分シンプルではあったが、入り口には「御休憩〇〇円」「御宿泊〇〇円」という表示が掲げられていた。

「奥さん。ここにしましょうか？」

渡辺は美幸に問いかけた。その声には、もはや隠しきれない優越感と欲望が混じっている。