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The altar of a sacrifice
第3章 深紅に濡れる祭壇

鈴音の声に人影が振り返る。
闇に紛れているけれど、その姿は確かに公秋さんだった。
「やぁ…、綾くん。今夜は自室に居なさいと言ったよね?」
影を落としている顔に白い歯列だけが浮かんでニィと笑んで見せる。
「逃げないでよ、君の血が必要なんだ…」
おいでとばかりに公秋さんが両手を広げる。
公秋さんの長い腕は大きく左右に伸びていて、またその姿から伸びる影も同じように大きく大きく伸びている。
その場景は俺の中に畏怖を抱かせるのに十分だった。
なんなんだよ…。
こんな異様な事が許されていいのか?
ギリッと鈴音に掴まれた腕が痛む。
背中を押す掌の感覚が鋭くなり、未來と琉生が「進んで…」と囁いている。
…嫌だ。
「放せっ!!」
力尽くで暴れて鈴音の腕を振り切ると、俺は三人から離れる様に飛び退いた。
「なんなんだよコレ…、お前ら……気持ち悪いんだよ!!」
動揺しているのか、恐怖からなのか、脚がもつれてフラフラする。
いや、もしかしたらこれは部屋に充満しているこの甘ったるい匂いの香の効能なのかも知れない。
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