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御朱印女と怪談男〜にさつめっ☆〜
第32章 愛しい気持ちと積み重なる記憶
☆☆☆
志摩市にある『伊雑宮』から、度会郡大紀町にある『瀧原宮』までは車で1時間ほどだった。

本当は来た道を戻って内宮の方を抜けていった方が近いらしいのだけど、それだと面白くない、ということで、敢えて細めの県道を進む道を選んでいた。確かに右も左も田んぼや畑が続く、のどかな田舎の道、という感じの道路をひたすら走っていくルートだった。

飲み物も補充してあったので、ふたりでちびちび飲みながらのんびりとした移動。
カーステレオからはFMの音楽が流れている。
少し開いた窓からはさーっと風が吹き込んできて、なかなかに気持ちがいい。

ちょうど、知っている曲が流れてきたので、自然と鼻歌を歌ってしまう。

♪〜

「GReeeeN、か」
「うん、星影のエール。私、これ結構好きなんだ」

NHKの朝ドラ「エール」の主題歌にして、合唱曲なんかにもなってる名曲だ。
知らない人同士が出会って、互いを照らし出す。
白紙の未来は『何を描くか』じゃなくて『誰と描くか』が大事・・・

そんな歌詞だ。

「いい歌だよな・・・俺も好きだ」

♪昔々から、
 人は迷わないように、
 星に名前をつけた

素直さんが口ずさむ。
私も合わせて歌詞をなぞった。

ラジオからはオリジナルのGReeeeNの力強い歌声、
そこに私たちの歌が重なっていく。

♪愛する人に
 出会える・・・星影に響くのはエール・・・

誰かと歌う、
それはなんだかとても心地が良いな・・・
そんなふうに思った。

景色を眺めたり、歌を歌ったりしていたら、あっという間に1時間が過ぎてしまったらしい。

「さ、ついたぞ」

瀧原宮は頓登川(とんどがわ)沿いにある、森に囲まれた静かな神社だった。
川沿いという点が、同じく五十鈴川沿いにある内宮の造りに似てる。

鳥居前にお手洗いがあるので、そこでちょっとトイレを済ませ、いよいよ最後の別宮の参拝に向かう。

「ここも川のお水でお清めできるみたい」
普通の手水所もあるのだが、宿衛屋の横に川に降りる石段があり、そこで頓登川に直接手をひたしてお清めもできるようだった。

せっかくなので、二人して川の冷たいお水ですっきりと手を清める。
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