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甘い飴と甘い鞭
第2章 慰安
「ふ、……ふ、ぅ」

荒い息を漏らしながら、思い描くあの人との時間。
あの冷たい鞭先が恋しくて堪らない。
自分でいくら触ったところで、その体温では、その感触では、その強弱では。

――足ンない。

おれは、ぎゅっと性器を握りしめ、上下に扱いた。
自分で与えられる強い刺激ったらこれしかない。

「……ッは、あ、ああ、あッ」

堪え切れずにシャツが唇からはらりと落ちて、おれは声を上げた。
鞭の飛ぶ想像をしながら、強弱を付けて性器を上下に擦る。
ゆったりと瞳を開いたおれは、濡れそぼつ亀頭を見つめる。
ぴゅぴゅ、っと白い精液がフローリングを汚していくのを、冷めた気持ちで眺める。
息が落ち着くのを待っておれは床を拭き上げ、下着を拾い上げた。
なんて、むなしい行為なンだろう。
溜息を吐いて、立ち上がったその時。
玄関の方で扉の開く音がした。
思わず時計を振り返った。――まだ20時を過ぎたばかりだ。
おれは慌てて下着を履き直す。床を吹いたティッシュは掌に握りこむので精一杯だった。
リビングの扉が開いて、ジェイの姿が現れる。
その表情はやけに暗く、不機嫌そうに見えた。

「な、んだよ……やけに早いじゃないか」
「ん。残業が入ったんで、寄り道は無しだ」
「……おれ、風呂入って来る」

ちょうどその予定だった、と装っておれはジェイの横を通り抜けた。
鼓動が高鳴る。
見られたわけでもないのに、咎められる行為でもないのに、おれの胸には少しの罪悪感があった。
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