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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第2章 第1話 温かい右手
 先月で10歳になった「坊ちゃま」は平日は毎日街中にある|学苑《がくえん》に通っていて、貴族の子弟が多く通う学び舎ということで送迎は必ず大人が行う決まりだった。

 たいていの生徒は母親か年配の従者に連れられて登校する中でまだ少女にも見える半亜人の私に手を引かれて道を歩く坊ちゃまは目立っていて、貴族の学苑で半亜人の姿を見かけて眉をひそめる保護者も多い中で坊ちゃまはぼくのメイドさんは美人だろうと学友たちに胸を張って語っていた。

 表向きは半亜人である私を敬遠している坊ちゃまの学友の男の子たちも子供だけの場所では「ホルスタインさんと仲良くなりたい」と言っていると坊ちゃまから聞かされて、それが本当なのかは分からなくても私は心から嬉しく思った。


 坊ちゃまが学苑で授業を受けている間に私は邸宅の家事全般を一人でこなして、朝から作っておいた簡単な昼食でお腹を満たすと坊ちゃまの祖父である当主から与えられた本で学問を学ぶ。

 この邸宅には当主に雇われた家庭教師も定期的に来てくれるので勉強を教えるのは私の役目ではないし、幼い頃から成績優秀な坊ちゃまは家庭教師の先生も目を丸くするほど英気と才能に満ちている。

 それでも坊ちゃまが過ごしている世界に少しでも近づきたくて、34歳の半亜人である私は初等教育の段階から少しずつ学問を身に着けていた。


 亜人の中でも学のない家庭に生まれた私は少し長く勉強をするとどうしても眠くなってしまって、その日も机でうつらうつらとしている間に時限式の時計が鳴り響いた。

 そろそろ準備をして家を出ないと坊ちゃまのお迎えに間に合わないと私はさっと席を立って、メイド服を整えると|鞄《かばん》を持って邸宅を出た。
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