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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第7章 第6話 愛情の甘い味
「それで、早速お聞きしたいのですが……食事の方は、今はいかがですか? 先日より軟菜食に切り替えましたが……」
「主食も柔らかめにして、どうにか食べられています。ただ、軟菜食になってもむせ返ることは食事中に数回あります」
「そうですか。いずれは完全流動食になりますが、ともかく口から食べられるうちはそうして頂くのが一番です。どの臓器も使わなければ衰えていきますからね」
「先生、坊ちゃまは……あとどのくらい生きられるのですか?」

 まだ男性医師は質問を終えていないのに、私は我慢できなくなって最も聞きたいことを口に出してしまった。


「ホルスタインさん、まず生きているということをどう定義するかを考えましょう。近年は人工呼吸器の進化が著しいですから、彼は自発呼吸が満足にできなくなっても心臓を動かし続けてある程度長期間生存することはできます。……ですが、いずれは呼吸筋が完全に止まって死に至りますし、その前に会話もままならなくなるでしょう」
「……」

 坊ちゃまが、いずれ死に至る。

 それは私が一番考えたくない、真剣に考える度にいつも狂いそうな思いに囚われる現実だった。


「この都市では積極的安楽死は認められていませんが、医師の許可のもと尊厳を持って自然な死を迎える選択肢は認められています。私は主治医として彼の意思を尊重しますし、彼が意思を示すのが難しくなれば家族であるあなたの意思を最優先に考えます。もちろん、同居されていない当主様のご意見などよりもあなたの意思を尊重します。当然彼の母親の意見などよりもです」
「先生……」
「人間族か亜人かは、家族としての意思決定の重さには何一つ関係しません。彼はあなたを事実上の妻であると公言していますし、当主様もそれを認めておられます。ですから……」

 男性医師はそこまで話すとため息をつき、言葉を続けた。


「今のうちに、彼がまだ正常に会話できる間に、最期の時のことを相談しておいてください。ただ……」
「……うっ、ううっ……」

 椅子に腰掛けたまま、先ほどから涙を流していた私は既に号泣していた。
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