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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第7章 第6話 愛情の甘い味
 坊ちゃまはいずれ死を迎える。

 それはもう遠い未来の話ではなく、死を迎える前には私と会話すらできなくなる日がやって来る。


 私はそれを理解した上で、坊ちゃまに自らの死に方について決断してもらう必要がある。

 こんな残酷な役割は、学のない半亜人の従者である私にはあまりにも重すぎる。


 私がもし半亜人でなくとも、従者でなかったとしてもそれは同じことだろう。

 坊ちゃまのただ一人の恋人であり、ただ一人の家族になった以上、そうありたいと望んだ以上、私には彼の運命を引き受ける義務がある。


「ホルスタインさん、どうぞ涙を拭いてください。……ただし、ただしです」
「……」

 男性医師は柔らかい材質のちり紙を私に差し出し、涙を拭わせながら続ける。


「あなたが事前に最期の時の話をしておくことが、必ず彼のためになるとは限りません。今は将来にあえて向き合わず、彼が意思を示せなくなった時に初めて決断されるのでもよいのです。……ですが、それはあなたに彼の最期の全てを決断させることにもなります。こればかりは、医師の立場では何が最もよいとご提案することはできません」
「……はい」
「本当に申し訳ない。あなたに負担をかけたくないと言いながら、私は結局あなたに全てを委ねている。……これが、現在の医学の限界です」

 肩を落とした男性医師の姿を見て、私は坊ちゃまの病状に心を苦しめているのは私や当主だけではないということを改めて理解した。

 研究者としての上司であるということや遠い親戚であるということを抜きにしても、坊ちゃまは本当に素晴らしい医師に出会えたのだと思った。
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