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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第8章 第7話 最期の願い
 坊ちゃまがもうすぐ30歳の誕生日を迎える日、54歳になった私は坊ちゃまに久々に外に連れ出してほしいと頼まれた。

 坊ちゃまは既に寝たきりの状態で、研究所に出入りすることもできず1日中自宅で私の介護を受けていた。

 車椅子に乗ってももはや遠出することはできない坊ちゃまを、私は車椅子を押して近所の散歩に連れ出した。


 半亜人の腕力があってもなくても、全身の筋肉が衰弱して痩せ衰えた坊ちゃまの身体を車椅子で運ぶのは容易だっただろう。

 なだらかな坂道をゆっくりと上って、私は坊ちゃまを少しでも高い場所に連れて行こうとする。

 やがて天に召される坊ちゃまが、少しでも新たなる世界に順応できるように。


 もうすぐ日が落ちる。茜色に染まっていく空を私は坊ちゃまと共に眺める。

 以前は美しいと思えていた日没の風景は、今の私にとっては坊ちゃまの生命を1日1日と削っていく予兆にしか見えなかった。

 それでも今の坊ちゃまには、少しでも暗い表情は見せないように。
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