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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第8章 第7話 最期の願い
 私は意を決すると、透明な合成樹脂の口器で坊ちゃまの口と鼻を覆っている人工呼吸器の管を引き抜いた。

 思い残しがないように、坊ちゃまをこの世に引き止めてしまわないために、私は人工呼吸器を管ごと部屋の隅に放り投げた。


 生命をつないでいた酸素の供給を絶たれ、全身が機能不全に陥った坊ちゃまは不規則な喘ぎ声を上げ始める。


「はぁ、あ……ありさ……ありさ……」
「さようなら、坊ちゃま。いえ、リュート……」

 最後に彼の名を呼んだ私に、坊ちゃまは再び微笑みを浮かべてくれた。

 そして全身を引きつらせ、激しく乱れた呼吸を繰り返す。


 それはこの世の誰よりも美しく優しかったかつての少年の、壮絶な最期だった。

 間もなくして坊ちゃまの呼吸は完全に停止し、坊ちゃまは、リュートは永い眠りに就いた。


「あああ、あ、あっ……リュート、リュート……」

 私は坊ちゃまの名を何度も呼びながら、彼の亡骸にすがりついた。

 衰弱した身体は残されていたかすかな熱さえも失い、私の温かい右手が触れても坊ちゃまはもう動かない。

 宝玉のように美しかった彼の瞳に、光が宿ることはもう二度とない。
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