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乳牛メイドのホルスタイン あの、かけがえのない日々のこと
第9章 エピローグ かけがえのない日々のこと
 私の名前はアリサ=ランバート・ホルスタイン。

 この世界において亜人の純粋な記号は個人名だけで、後は仕えている人間族の名字と種族名だけで区別される。

 牛型亜人の父と人間族の母との間に生まれ、山奥の村で暮らしていた半亜人の私が大陸に名を残す貴族「ランバート家」の御曹司に仕える従者として選ばれたのは、生まれつき子宮を持たなかったからだった。


 私が生涯を捧げて仕えた彼の名は、リュート・ランバート。

 私は彼を死の瞬間まで「坊ちゃま」と呼び続けた。

 ランバート家の当主であった祖父の末子の一人息子として生まれた彼は、逃れられない死の宿命を背負っていた。


 |罪業《ざいごう》病。

 それが坊ちゃまの人生を決定づけ、彼を死に追いやった難病だった。


 罪業病は人間族にのみ男女を問わず突然変異的に発症し、発症した人間族からその子へと確実に遺伝する。

 罪業病の患者は20歳頃までは健康な人間族と同様に育つけれどその後に全身の神経と筋肉が徐々に衰弱し、最終的には呼吸筋が完全に停止して死に至る。

 治療法はなく、症状の進行を遅らせる方法さえも確立されていない。できることはわずかな生命の火を消さないための延命行為だけ。


 だから罪業病を発症した患者は子を作ることを禁じられ、その世代で遺伝子を終わらせることを求められる。

 坊ちゃまの父親であったランバート家の末子はその禁忌を犯して町娘と子を作り、その結果この世に生まれてきてしまったのが坊ちゃまだった。
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