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路地裏文化研究会
第4章 歓迎会の朝
 水曜日の朝になりました。昨日は銭湯に行って、おとなしく寝るつもりが、なかなか寝付かれず…。ぐっすり眠って、明日、よい体調でいられるために…心の中でそんな言い訳をしながら、わたしは、いつもの密かな”勉強”に耽ったのでした。

 研究会に参加することが決まってからというもの、頭の中で思い浮かべる情景が急に鮮烈になっていました。自分の指におじさんたちが乗り移ったかのように動くような気がしました。思わず漏れる声に自分で驚いて、慌てて片方の手で口元を抑える…そんなことを何度も繰り返しました。

 それでも、わたしはいつの間にか眠りに落ちて朝を迎えました。できることなら改めてお風呂に行きたいくらいでしたが、そこまでの時間はありません。部屋にある小さなガスコンロでお湯を沸かし、洗面器に注いでタオルを濡らして体を拭ったのでした。拭いながら、今日が”あの日”と重ならなくてよかったと思いました。

 わたしはお部屋を出ておばさんに声を掛けます。

 「おはようございます」
 「おはよう。ちょっと待っててね」

 アパートではおばさんにお願いすれば朝ごはんもつくってくれます。おばさんが運んできてくれたお膳を受け取ってお部屋に戻ります。ごはん、お味噌汁、焼き魚、おひたしをいただきます。

 「ごちそうさまでした」

 お膳をおばさんに返します。

 「お粗末様でした。あしたも朝ごはんつくってよかったかしらね?」
 「ええと…はい。お願いします」
 
 返事をしましたが、わたしは一瞬、お願いしてもよいのかどうか逡巡しました。今日、ちゃんとアパートに帰ってくれば何も問題はないのに…。何も問題は起きないのです。ただ、”歓迎会”に参加するだけ。着ていくものも普段通りですし、お化粧もしていませんし…。でも、ふと、せめて下着は新品を下ろそうと思いました。

 新年でもないのですけど、わたしにとっては、似つかわしくない行動を起こす日だったから…などと言えばそれらしい理由ですが、股布がよれよれしているような、使用感のある下着で行くことが急にためらわれたのでした…。

 「あ…ごめんなさい、明日は、朝ごはん結構です…」
 「あら、そう? わかりました」
 「ごめんなさい…」
 「いえいえ…いろいろあるものね?」
 「え…?」
 「玄関は閉めるけど、裏のドアの鍵の番号、覚えてるわよね?」
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