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路地裏文化研究会
第6章 広がる妄想
 「せっかくだからボクも一緒に撮ってよ」

 山田さんがそう言いながら体をわたしの右にスッと寄せました。

 「お酒は、食べながら呑まないとね。なにせ無濾過生原酒だから…」

 器におでんとお出汁を足してくれました。

 「今までで、いちばん美味しいかも…」

 村井さんも山田さんと対をなすように、わたしの左に身を寄せました。

 「山田さんが腕に寄りを掛けて仕込んだおでんだからね。いっぱいお食べなさい。ボクたちもいただこう」

 ちゃぶ台の向こうから吉川さんがカメラを覗いています。

 「いいね、みんないい食べっぷりだ…なかなか面白いアングルだよ。おお、そう言えば”掃きだめの鶴”なんていう諺があったな…」
 「”鶴”はいいとしても”掃きだめ”とはひどいな」
 「じゃあ、三蔵法師様と下僕の…なんて言ったっけ」
 「はいはい、猪八戒と沙悟浄でしょ…」

 わたしは、猪八戒と沙悟浄…いえ、そんなことはありません…素敵なおじさんに挟まれながら、おでんを食べています。密着されていてうまくお箸が使えません…。

 「いいね、女神様…その困ったような笑顔。いいよ…、そう、そのまま…。はい、両脇、もうちょっと寄って…もっと、もうちょっと…」

 山田さんと村井さんがさらに密着してきます。お二人の息が耳や首元にかかっています…。

 「俺も入れてもらおう」

 中村さんもお猪口を片手に立ち上がると、わたしの背後に回って膝立ちになりました。

 「ああ、いいね、いい感じだ…。そう、もっと、もっと、女神様を慈しんで…。中村さん、持ってるお猪口を女神さまの口元に持ってってみようか…そう、そんな感じ」

 中村さんが差し出したお猪口が唇に触れました。わたしはカメラを横目に見ながら、傾けられたお猪口からお酒を口の中に少しずつ注がれていきます。その瞬間を狙って吉川さんがシャッターを切っています。

 「素敵だ、素敵だよ、女神様…」

 部屋の空気が一気に濃くなったような気がしました。わたしは、おじさん三人に囲まれて、なにか、わたしのからだが反応したような感覚を覚えました。そして、頭の中に、いつも思い浮かべる情景、いつもの妄想が湧き上がってきたのでした。
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