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Sturm und Drang-疾風怒濤-霞んだ空の向こう側
第8章 告白
でも、そんな恵樹は、自分を静かに見つめる視線に気が付いていた。それは、朋華の視線。幼稚園時代から美少女と言われ、それを自覚していた梨々香と違い、朋華はそういうキャラではなかった。梨々香と同じように姉がいた。学力優秀で美人な野々花と違い、成績不良で粗野な姉。そして、自分自身も可愛いとか美人だとか言われたことはなかった。というより、朋華には、野々花や梨々香と違い、弟がいた。そして、両親の期待は弟に向かっていて、朋華には向いていなかった。待望の跡継ぎという弟と、二番目の女子の朋華。当然、扱いも違った。姉も母も父も弟には「可愛い」を連呼して、抱っこしても、朋華はそういうこととは無縁だった。当然、自己肯定感も低かった朋華。「美人姉妹」と呼ばれ、自信満々の梨々香みたいなことはできなかった。そう、出会っていきなり、ハグするなんて・・・。そんなことをしたら迷惑がられると思っていた。確かに、朋華から見ても、野々花も梨々香も輝いていた。自分にはないものを持っている二人だった。その二人が「可愛い」と言いながら、恵樹を囲んでいた。
入学式の前。発表されたクラス分けの一覧表。自分のクラスがわからないで戸惑っていた朋華。母も父も姉も、連れてきた弟が機嫌が悪くて、機嫌を直すのに必死。だから、自分で探すしかなかったけど、クラス分けの一覧表があることすらわからないで、廊下を行ったり来たりしているときに、朋華が校門のところで保護者会の役員らしい人に付けてもらった名札を見て、手招きして、一覧表の朋華の名前を指差してくれたのが恵樹だった。
話すのが苦手らしく、一言も話さず、ただ、指差しで教えてくれた。
「ありがとう」
朋華は、お礼を言った。微笑むだけの恵樹。そこに現れたのが、野々花だった。野々花は恵樹を掻っ攫っていくと、妹の梨々香と「可愛い」と大騒ぎで、恵樹を囲んでいた。その二人が眩しく、羨ましかったことは、中学三年生になっても朋華は憶えていた。
そして、恵樹も、朋華を憶えていた。教室がわからなくて困っている朋華を。そして、教えたら、「ありがとう」と微笑んだ朋華の顔を。そう、その微笑みは、ずっと変わらなかった。あの事件があるまで。匡彦が引き起こしたあの事件。自分が殴った癖に、「朋華の肘が当たった」と言い募り、朋華が謝ることになったあの事件。恵樹は憶えていた。
入学式の前。発表されたクラス分けの一覧表。自分のクラスがわからないで戸惑っていた朋華。母も父も姉も、連れてきた弟が機嫌が悪くて、機嫌を直すのに必死。だから、自分で探すしかなかったけど、クラス分けの一覧表があることすらわからないで、廊下を行ったり来たりしているときに、朋華が校門のところで保護者会の役員らしい人に付けてもらった名札を見て、手招きして、一覧表の朋華の名前を指差してくれたのが恵樹だった。
話すのが苦手らしく、一言も話さず、ただ、指差しで教えてくれた。
「ありがとう」
朋華は、お礼を言った。微笑むだけの恵樹。そこに現れたのが、野々花だった。野々花は恵樹を掻っ攫っていくと、妹の梨々香と「可愛い」と大騒ぎで、恵樹を囲んでいた。その二人が眩しく、羨ましかったことは、中学三年生になっても朋華は憶えていた。
そして、恵樹も、朋華を憶えていた。教室がわからなくて困っている朋華を。そして、教えたら、「ありがとう」と微笑んだ朋華の顔を。そう、その微笑みは、ずっと変わらなかった。あの事件があるまで。匡彦が引き起こしたあの事件。自分が殴った癖に、「朋華の肘が当たった」と言い募り、朋華が謝ることになったあの事件。恵樹は憶えていた。

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