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シアター"名画座"で逢いましょう
第11章 初めての職質
派出所に戻ると宮前巡査長はじっとりと汗ばんでいて、額に浮き出た汗をポケットから丸めたハンカチを取り出して汗を拭きながら、遅番で引き継ぎの朝倉巡査に申し送り事項を伝えた。
「今日も平々凡々、巡回でこれといった不審な人物も不審物もありませんでしたよ」
では、今夜も安全であることを祈る。
そう言って宮前巡査長は引き継ぎの朝倉巡査に敬礼をして、制服を脱ぐために更衣室に向かいかけた。
そして、思い出したように「そうそう、さっきな、例のラブホテルの前で飛びっきりの美人を見かけたよ」とネクタイを弛めながら朝倉巡査に面白いネタの一つでも提供してやろうと話し始めた。
「美人?」
「ああそう。私はね、この街の住人の顔ならほとんどこの頭の中に入っているけど、あれほどの美人はこの街の住人じゃないね」
「デートの待ち合わせなんじゃないですか」
「ああ、私もそう思ったよ。でもね、待ち合わせ場所がラブホテルの前だなんて…意味深じゃないか」
「つまりは…不倫を疑っているんですね」
「まあな、最初はさ、ミニスカートで生足を見せつけていたから、立ちんぼうか、美人局(つつもたせ)じゃないかとも疑ったんだが、こんな真っ昼間からそれはないだろうと、職質もかけずに帰ってきちまったけど…、よくよく考えたら職質を装ってべっぴんさんとお話してくれゃ良かったと後悔してるんだ」
お前に似合いそうなべっぴんだったから、引き合わせてやりたいとも思ったんだが、不倫する女なんてイヤだよな?
宮前は、そんなことを言いながら更衣室に消えていった。

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