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シアター"名画座"で逢いましょう
第11章 初めての職質
宮前巡査長が派出所を後にして家路に向かうと、一人残された朝倉は引き継ぎノートに目を走らす。
宮前から口頭で引き継ぎ事項を申し受けたが、抜けている箇所がないかノートに目を走らせて昨夜から今朝にかけて何事もなかったことを確認する。
各項目には「特になし」の記載が続く。
『平和な街だな…』
治安がいいのは何よりだが、こうも何事もないと暇で仕方ない。
コーヒーでも飲むか…
朝倉はデスクを離れて厨房に向かう。
コーヒーサーバーに残っている琥珀色の液体をカップに注いで一口飲んでみた。
「苦い…」
いつ淹れたコーヒーなのだろ?
すっかり酸化してしまって香りも抜けて苦味だけがやけに際立つ。
これは飲めたものじゃないな。そう思ってカップに注いだコーヒーを流し台のシンクに流し捨てた。
「お茶にするか…」
ティーバッグを急須に入れてポットからお湯を注ぐ。
安物のお茶でもお湯を注いだばかりだと香ばしい匂いがたつ。
湯呑み茶碗にお茶を注いでデスクに着くと「遅れてすいません」と今夜の相棒である愛川静香巡査がようやく派出所に到着してきた。
「少し遅すぎるんじゃないのかい」
そういう朝倉だって、度々遅刻して宮前巡査長から小言を聞かされていた。
しかし、自分の事は棚にあげて、先輩風を吹かせて愛川静香に注意を与える。
「思っていたより道が混んでまして…」
吹き出る汗をハンドタオルで顔をゴシゴシ拭きながら「すいません」の一言さえない。

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