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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第14章 昨日の甘さと、明日からの恥ずかしさ ~週末と週初の狭間で~
<健治SIDE>

一方、同じ頃。

大内健治は、会社が所属する組合主催のゴルフ懇親会に参加していた。

快晴のゴルフ場で、47歳とは思えない安定したスイングを繰り返す。

ナイスショットが続き、周囲からも感嘆の声が上がっていた。

口ひげを整えた渋い顔に、いつもの落ち着いた表情を浮かべながらも、
彼の脳裏は彩香のことでいっぱいだった。

(……彩香、今頃何をしてるんだろうな)

昨日、マンションで泣きながら自分に甘えてきた姿。
タクシーに乗った際の別れ際の寂しそうな顔。
そして来週、自分の家に招いてくれると言った時の、
恥ずかしそうに上目遣いになった表情

——クラブを握る手に、思わず力がこもる。

「健治さん、今日は調子いいねえ!」

同じ組合の別会社に所属する新井さん(49歳)が、笑顔で近づいてきた。

「なんか前に比べて、少し若返った感じしますね。
雰囲気明るくなったというか……いいことあったんですか?」

健治さんは一瞬動きを止め、苦笑いを浮かべながら帽子を軽く直した。

「若返ったか……そんな歳じゃないですよ、新井さん」

穏やかだが少し照れくさそうな返事だった。

しかし、そのやり取りを少し後ろで聞き逃さなかった男がいた。

同じ会社の営業部に所属する矢賀部浩一(42歳)が、
ニヤニヤしながらクラブを肩に担いで近づいてくる。

「やっぱりなんかあったんじゃないの?
大内さん。最近、明らかに機嫌がいいですもんね。今日もなんか楽しそうでさ」

矢賀部はからかうような目で健治さんをチラリと見た。

健治さんは低く小さく笑い、軽く肩をすくめた。

「余計なお世話だ、矢賀部。……お前こそ、最近浮かれてるのはどうしたんだ?」

「俺はいつものことだよ。課長こそ、絶対女だろ?」

矢賀部がさらに茶々を入れると、周囲のメンバーから笑い声が上がった。

健治さんは苦笑を深めながらも、内心で静かに思う。

(……まあ、ばれるなよ。
彩香のことは、まだ誰にも言えない)

彼は再びアドレスを取り、集中するふりをしながら、胸の奥で彩香の笑顔を思い浮かべた。

(明日……会社で会えるのが、こんなに待ち遠しいとはな)

47歳の胸に、穏やかな幸福感と、抑えきれない彩香への想いが静かに広がっていた。
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