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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第20章 会社で疼く恋~平日の秘密の距離/金曜日~
14時23分 会議終了後 喫煙室

会議が終わり、田中部長が先に退室した後、矢賀部は健治を誘うように肩を叩いた。

「大内さん、ちょっと煙吸いません? 今日の資料、いい感じでしたし。」


二人は13階の喫煙室へ移動した。


雨の続く午後、室内は少し薄暗く、換気扇の音だけが響いている。

健治は壁に寄りかかり、タバコに火を付け、深く紫煙を吸い込んだ。
口ひげの下で煙をゆっくり吐き出す渋い仕草は、いつもの彼らしい。

矢賀部も隣に並び、タバコをくわえながらニヤニヤと切り出した。

「なぁ、大内さーん。最近、なんか怪しくみえるんすよねー。」

健治は眼差しを細めたまま、静かに煙を吐いた。

「……何がだ?」

矢賀部は笑いながら指を一本立てた。

「まず先週火曜の喫煙室。あの時、めっちゃぼーっとしてましたよね。
『考え事』とか言ってたけど、あの顔、明らかに女の話でしょ?
 久しぶりに見る『いいことあったな』顔だったじゃないですか」

健治は小さく肩をすくめ、低い声で返す。

「気のせいだ。仕事の話に決まってる」

矢賀部はさらに畳みかける。軽口を叩きながらも、目は鋭い。

「それだけじゃねえっすよ。先週の日曜のゴルフ懇親会!
 お前、スイングも冴えてたし、新井さんに『若返った』とか言われて、
 めっちゃ照れくさそうに笑ってたでしょ。あれ絶対女だろ。
 大内があんな顔するなんて、よっぽど特別な子なんじゃないの?」

健治はタバコを灰皿に軽く落とし、渋く笑った。
深く刻まれた皺の間で、鋭い眼差しが矢賀部を捉える。

「矢賀部、お前は相変わらず想像力豊かだな。
 俺はただ、最近ゴルフの調子が良かっただけだ。
 お前こそ、昨日の娘のピアノの発表会で浮かれてんじゃないのか?」
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