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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第20章 会社で疼く恋~平日の秘密の距離/金曜日~
矢賀部は笑いながらも引かない。

「誤魔化すなよ〜。同期の俺に隠し事はダメですよ~。
 可愛い子か? 社内? それともアプリ? 詳しく聞かせてくださいよ~。」

健治は煙をもう一口深く吸い、ゆっくり吐き出した。

男らしい厚みのある胸を軽く反らし、落ち着いた低い声で続ける。

「本当に何もない。
 お前が勝手に盛り上がってるだけだ。
 俺はもうバツイチで、19歳の息子もいる歳だぞ。
 そんな浮ついた話はない」

矢賀部は目を細めて健治の顔をじっくり見つめたが、
健治の表情は一切崩れない。渋く、余裕のある態度で煙をくゆらせている。

「……ふーん。まあ、秘密は守る主義だから、深くは聞かないけどさ。
 もし本気でいい子ができたら、ちゃんと相談しろよ?
 俺、意外と口固いだろ?」


健治は口の端をわずかに上げ、軽く拳を矢賀部の肩に当てる。

「その口の固さは信用してるが。
 余計な詮索はなしだ。……スカッシュの次、ビール奢るから、それで勘弁しろ」


矢賀部は大笑いしながらタバコを揉み消した。

「わかったわかった。じゃあ次は本気で聞き出すからな〜」


二人は喫煙室を出た。
健治は廊下を歩きながら、内心で小さく息を吐いた。


(……危ないところだったな。
 彩香のことは、まだ誰にも知られるわけにはいかない)


胸の奥に、彩香の照れた顔と震える声が蘇る。
日曜日の甘い約束が、47歳の体を静かに熱くしていた。


<彩香SIDE(同時刻・13階 自席)>

彩香はデスクで資料を眺めながら、
さっきのミーティングルームでの出来事を思い出して顔を赤らめていた。

(……健治さん、会議中も普通にしてるよね……
 私だけ、ずっと意識しちゃってる……)
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