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披露宴の裏庭。蜜夜の神戸
第4章 瑞希(4)
「美香はいつもこう言うんです」
糸が紡がれるように私の口から言葉が溢れ出す。
「恋愛はどちらかが嫌いになったらもう終わり。たとえ私が好きな人にふられたとしたら私はもうその時点で諦める。絶対に追っかけてはダメって自分に強く言い聞かせるの」って。
「美香が今日もこうして、無理なお酒を飲んで、記憶飛ぶぐらい酔って、修二君とエッチしてるのも、多分、先輩への一つの当て付けだと思います。気丈な振りしてますが、美香はまだ先輩のことが心のどこかに引っ掛かってます」
再度、私は言葉を続ける。
「先輩、知ってますか?美香、来年あたり、結婚します。相手はお見合いで知り合ったお医者さんです。もう今となっては、先輩と美香との関係に嫉妬心なんて一ミリもありません。これは本心です。私が結婚してからの話なんですから。
大事なのは未来です。過去は振り替えっても仕方ないことです。これからは、私は美香の結婚を心から祝福するつもりです。だから、先輩も美香の幸せを祈ってあげてください」
そういうと、何だか涙が出てきた。美香の気持ちを思ってのことだろうけど、何の気持ちか分からないまま、なぜか私は肩を震わせて泣いていた。
*******
私(美香)と先輩は交際を始めてから、名古屋と大阪を行き来するようになった。別れ際に残る彼の残り香をしまい込んで大阪へと帰る。けれど、そんな情熱の揺らぎも長くは続かなかった。
大阪の喫茶店。コーヒーから立ち上る湯気が、二人の間の境界線を曖昧にぼかしていた。沈黙を破ったのは、先輩の唇からこぼれた冷ややかな別れの言葉だった。
「……分かったわ」
喉の奥から拒絶の言葉が出てきそうになったけど、私はそれを静かに飲み込んだ。「嫌だ」という二文字を口にして、彼の情に縋り付くような真似はしたくなかった。
この数ヶ月は、まるで質の高い絹に包まれた「恋愛ごっこ」のようでした。互いの孤独を埋めるためだけに重ね合わせた呼吸。どちらかがその熱を投げ出し、背を向けてしまえば、指の間から砂がこぼれ落ちるようにすべては終わる。
追いかけたり、泣き叫んだりする未練がましいことは私の性分じゃない。凛とした沈黙だけが、最後に私が纏える唯一の、そして最も贅沢な衣装なの。別れを決めたのが彼ならば、それを微動だにせず受け入れることこそが、私の選んだ、この遊戯の幕引きだったのよ。
糸が紡がれるように私の口から言葉が溢れ出す。
「恋愛はどちらかが嫌いになったらもう終わり。たとえ私が好きな人にふられたとしたら私はもうその時点で諦める。絶対に追っかけてはダメって自分に強く言い聞かせるの」って。
「美香が今日もこうして、無理なお酒を飲んで、記憶飛ぶぐらい酔って、修二君とエッチしてるのも、多分、先輩への一つの当て付けだと思います。気丈な振りしてますが、美香はまだ先輩のことが心のどこかに引っ掛かってます」
再度、私は言葉を続ける。
「先輩、知ってますか?美香、来年あたり、結婚します。相手はお見合いで知り合ったお医者さんです。もう今となっては、先輩と美香との関係に嫉妬心なんて一ミリもありません。これは本心です。私が結婚してからの話なんですから。
大事なのは未来です。過去は振り替えっても仕方ないことです。これからは、私は美香の結婚を心から祝福するつもりです。だから、先輩も美香の幸せを祈ってあげてください」
そういうと、何だか涙が出てきた。美香の気持ちを思ってのことだろうけど、何の気持ちか分からないまま、なぜか私は肩を震わせて泣いていた。
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私(美香)と先輩は交際を始めてから、名古屋と大阪を行き来するようになった。別れ際に残る彼の残り香をしまい込んで大阪へと帰る。けれど、そんな情熱の揺らぎも長くは続かなかった。
大阪の喫茶店。コーヒーから立ち上る湯気が、二人の間の境界線を曖昧にぼかしていた。沈黙を破ったのは、先輩の唇からこぼれた冷ややかな別れの言葉だった。
「……分かったわ」
喉の奥から拒絶の言葉が出てきそうになったけど、私はそれを静かに飲み込んだ。「嫌だ」という二文字を口にして、彼の情に縋り付くような真似はしたくなかった。
この数ヶ月は、まるで質の高い絹に包まれた「恋愛ごっこ」のようでした。互いの孤独を埋めるためだけに重ね合わせた呼吸。どちらかがその熱を投げ出し、背を向けてしまえば、指の間から砂がこぼれ落ちるようにすべては終わる。
追いかけたり、泣き叫んだりする未練がましいことは私の性分じゃない。凛とした沈黙だけが、最後に私が纏える唯一の、そして最も贅沢な衣装なの。別れを決めたのが彼ならば、それを微動だにせず受け入れることこそが、私の選んだ、この遊戯の幕引きだったのよ。

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