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想いあふれて
第2章 カサブランカ
紋切り型の
マニュアルに書かれたようなあいさつとは違う、

嬉しさがこみ上げるように発せられたその声は、
聞いたとたんに胸を温める威力のある
優しい響きを持っていた。


その声の主は、りつかが店に入ると、
パッと花が開くような笑顔を向けた。

年齢は四十代半ばだろうか。
りつかより五歳ほど年上であろうその店主の女性を、
すぐに好きになった。

それ以来、この店に来るのは
もう三回目となる。


彼女は、常連客らしき人たちから
「花さん」「花ちゃん」と呼ばれている。

屈託のない飾らない笑い方が
健康的で明るくて、
それでいて艶っぽい。

今日もさりげなく、
空になったグラスを新しい水に取り換えてくれた。

「ありがとうございます」

飲み物一杯で長居しているのは申し訳なくて
肩をすくめて礼を言うと、
花は微笑んだ。

「このあと、海がエメラルド色になるわよ。
 綺麗よ。ゆっくり見てってね」
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