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想いあふれて
第2章 カサブランカ
りつかは床のグラスを拾って
自分がいたテーブルに置いた。

「大丈夫です。そのまま動かないで」

子供連れの客に言うと、
りつかはこぼれたパインジュースを
紙ナプキンで寄せ集めるようにして拭いた。

「ありがとう。助かる」

花がりつかのところにやって来て、
素早くモップをかけはじめた。

手を休めないままふりむいて、
りつかに続けた。

「悪いんだけど、カウンターにあるドリンク、
 テラス席に運んでくれないかな」

「えっ。私がですか?私でいいんですか」

「あなただから頼んでるの。
 今日の日給も払わせてもらうわ。
 それでいいわよね」

やわらかい微笑みの奥に
有無を言わせぬ強引さがある。

けれども不思議と、嫌ではなかった。

ランチのラッシュは続き、
りつかは花の勢いに押され、
言われるがままにテーブルを片付け、
飲み物を運び、食器を洗った。

気づくと二時間、
働きどおしでもう夕暮れが近い。


「本当に助かったわ」

花は満足そうに息を吐いた。
そしてこう続けた。


「ねえ、この店の店長になってよ」
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