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想いあふれて
第3章 濡れたシャツ、肌の熱
激しい風が海から吹き込み、
店全体が、みしみし音を立ててきしむ。

続いて窓の外が一瞬昼間のように光ったと思うと、
ドン、と地面を震わせる落雷の音が届いた。

「いやっ」

思わずりつかはカウンターの下にうずくまった。



───嵐の時はかなり店がきしむから、注意してね

そう花に言われていた。



不意に、植物園での大雨を思い出した。

あの時の雨を、
りつかは恵の雨だと感じていた。

啓のジャケットに守られて、
大雨の中を車まで走った。
雨の雫を躍らせるアスファルトに
ヘッドライトが映って綺麗だと思った。

二人の密やかな囁き合いを
雨音が消してくれた。

そしてそのあとの、情事の声も。


けど今の雨は違った。

まだ慣れない人里離れた場所で遭遇する豪雨は、
いつ終わるかわからない恐怖を呼ぶ。

ずっとこのまま降り続いて、
店が流されてしまったらどうしよう。

今の私には、守ってくれるものは何もない。

気が付くと体が震えていた。

何か、ずっと堪えていた感情が、強い風となって、
りつかというあばら家を揺さぶってきしませているような、
そうしてりつかの中の何かを壊してしまいそうな、
そんな気がした。



「大丈夫ですか」

男がカウンターに近づき、声をかけてくる。

気が付くとりつかは
頭を抱え込んで、がくがく震えていた。




そのときだった。

大雨の中を、彼が店から飛び出して行ったのは。
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