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名馬の城
第3章 野武士の謀
「もし城壁を完成させ、武田を追い払うことができましたら、我々を家臣として召し抱え、眞弓姫を私の妻としていただきとうございます。」

「何だと!!」

それを聞いて城主は当然ながら怒りをあらわにした。
彼らを召し抱えるのは問題ないだろうが、かつての今川の臣下とはいえ野武士風情に大切な眞弓姫を嫁に欲しいなどと言われるのは侮辱に等しいことだった。

眞弓姫は城主の姫たちの中でも一番美しく、気立ての良い娘だった。

城主は怒鳴り散らして、追い返そうとしたが、家臣たちはなんとか思い止まらせようとした。

城主の気持ちもわからなくはないが、一つの城の命運がかかっている。
これまでは、降伏を条件に城だけは奪われずに済んだが、武田がそれで済ませるとは到底思えない。


結局、城主が折れず返事は持ち帰ることになってしまった。

城主と家臣たちが夜遅くまで話し合う中で、槻弓は野武士たちが寝泊まりする宿へともぐりこむ。
鼠の姿で。


野武士たちが織田や武田の間者とも限らない。
少しでも怪しい動きをしていたら、即刻断るよう城主に進言しようと考えた。

野武士たちは酒を酌み交わし、たわいもない下世話な話をしているだけだった。

やがて皆寝てしまう。

一旦、日の昇る前に城に戻らなくては。
ちょろちょろと外に抜け出すと、厩があり何頭か馬が並んでいた。
痩せ馬など一頭たりともおらず皆、手入れの行き届いたきれいな毛並みを持ち、立派な体躯の馬ばかりであった。

そのうちの黒毛の一頭がじろりとこちらを見下ろす。
品定めされるような嫌な視線だった。
その馬は体の大きさも他の馬より一回り大きく、言いようのない威圧感を放っている。

(こいつ……)

どこかで会った気がする…と感じた。
その瞬間、体の芯がじわっと熱くなる。

(馬などどこにでもいる。たまたまこれまで見てきた馬に似ていただけだ。)

そう思い込むことにして槻弓は急ぎ、城に戻った。

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