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名馬の城
第4章 陽動作戦
翌朝、野武士たちはいつものように作業に取り掛かろうとする。
そこへ資材を山のように積んだ黒鹿毛がやってきたのだが…

どこから紛れ込んだのか白く美しい雌馬がやってきて黒鹿毛の前を通り過ぎる。

途端に黒鹿毛は嘶き、雌馬を追いかけ始めた。
野武士たちがなだめようとも全く効果はなく、黒毛の馬は背に乗せた資材を全て振り落とし、全力で雌馬を追いかけ始めた。

黒鹿毛に逃げられてしまっては、本日完成させることはできない。
頭は野武士の一人に命じて馬を追いかけさせた。


「おい、逃げたぞっ!!」

それを城の櫓から見張っていた梓弓城の兵士が太鼓を打ち鳴らす。
槻弓の言う通り、馬が逃げたのを良いことに野武士の一人が城外へ出て行ってしまった、ように見えたのだ。

城内で待機していた他の兵士たちが一斉に飛び出して馬を追いかけて行った野武士を捕らえる。

頭は「馬を追いかけさせてくれ!!あの馬がいなければ城壁はできぬ!!」と言ったが、頭を始め野武士たちを一人ずつ改めると、その一人の懐から例の絵図が出てきた。

城の詳細が事細かに書かれている。

野武士たちは城主のもとへ引き立てられていく。

「これはどういうことだ?」

と城主は尋問したが、野武士たちは皆、口をつぐむ。

「お前たちが武田の間者であることはわかっている。このうちの一人が絵図を主のもとへ持ち帰り、城壁が完成したらこの城に家臣として居座り、間者を続け、味方が来たら内側から中へ誘導しようという魂胆だな?」

昨夜、槻弓が話した内容の通りカマをかけてみる。

「そうだ、よくわかったな。お前たちは遅かれ早かれ武田に屈することに違いはない。いずれにせよ姫は我らが頂くことになるがな。者ども、来世で会おうぞ。」

そう言って頭を始め野武士たちは覚悟を決めて城主たちに斬りかかってきた。

しかし、城内の家臣たちが総出で野武士たちを包囲したため、所詮多勢に無勢、野武士は一人、また一人と斬られ、とうとう頭も斬られてしまった。

「槻弓にはなんと礼を言ってよいかわからない。」

と城主は槻弓にきつく当たったことを後悔した。
槻弓にこそ褒美をやらねばと探させたが、とうとう見つけることはできなかった。

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